日本国内だけでも5万人、世界中で150万人が患っているとされる網膜色素変性症。
中途失明の3大原因の1つであり、日本の盲学校の生徒ではこの病気の生徒が2番目に多い状況です。
網膜色素変性症について
網膜色素変性症とは
網膜色素変性症(もうまくしきそへんせいしょう)とは、眼の中にある光を感知する網膜に異常が発生する遺伝性のある病気です。
人がモノを見ることができるのは、網膜に光の信号を感じ取る機能があるためですが、この網膜が正常に機能しなくなってしまうため、視力に大きく影響を与えます。
有効な治療法がまだ確立されておらず、難病(特定疾患)の1つに指定されています。日本国内では約5万人が、この網膜色素変性症の患者がいると言われています。
網膜色素変性症になりやすい方
遺伝性のため、特になりやすい方の共通する傾向は見られません。また親が網膜色素変性症だからといって、100%の確率で子供に遺伝するわけではありません。
幼少期で発症することもあれば、40代以降の中高年期に発症するケースもあります。
日本では人口10万人に対して約18人、4,000~8,000人に約1の確率で発症すると推定されています。
網膜色素変性症の症状
夜盲症(鳥目)
網膜色素変性症になった際に一番最初になることが多い症状です。
網膜内にある視細胞のうち杆体細胞(かんたいさいぼう)と呼ばれる、主に暗いところで働く細胞に異常が起こり、夜や薄暗い屋内でものが見えにくくなります。
最近は夜でも明る所が多いので、夜盲ではなく、視野搾取によって発病に気付くケースも増えています。
夜盲症については以下で詳しく解説しています。
視野狭窄
視野狭窄(しやきょうさく)は夜盲の次に発症する症状で、その名の通り、視野が狭くなっていきます。
周囲からぼやけ始めていき、徐々に見える範囲が中心部分へと狭くなっていきます。
ものにぶつかりやすくなったり、ものが見えたり消えたりするなどと、日常生活に支障をきたすようになります。
羞明(まぶしい)
網膜色素変性症のなった患者の中には、羞明(しゅうめい)の症状が出ることもあります。
これまでは何とも無かったような場所でも、まぶしさを感じたり、不快感や眼の痛みが生じます。
視力低下
進行が進むと視力低下の症状も出てきて、極度の視力障害になります。
進行性の病気ですが、非常にゆっくりと進みますので、数年あるいは数十年かけて進行します。
最悪のケースでは視力低下が進行し、失明してしまう可能性もあります。
網膜色素変性症の原因
遺伝性疾患のため、親が網膜色素変性症を患っていた場合は、その子供にも遺伝する可能性があります。
しかしながら孤発例(遺伝に関係なく発病する)もあり、一概に原因は特定できません。
遺伝形式には、常染色体優性遺伝、常染色体劣性遺伝、伴性劣性遺伝の3つのタイプがあります。
網膜色素変性症の治療方法
根本的な治療方法はない
残念ながら、今のところ(2017年現在)では、網膜色素変性症を根本的に治療する有効な手段は見つかっていません。
日本をはじめ、イギリスやアメリカでなどで、原因特定と有効的な治療法の確立のために、研究が行われています。
進行を遅らせる方法
進行を遅らせる対症的な方法として、暗順応改善薬(ヘレニエン)やビタミンA、循環改善薬などを使用することが知られています。
またルテインを摂取することで、進行を食い止めることに成功した事例も報告されています。
網膜錐体視細胞の細胞死を防ぐことができるかは、医学的にはまだ確認されていません。
しかしながら、12mgのルテインを摂取することで、進行を遅らせることができたという症例があることは事実です。
少しでも網膜色素変性症の進行を食い止めたいのであれば、いまのところはルテインを摂取しておくという選択肢が現実的です。
将来的には人工網膜も
まだ研究段階ですが、人工網膜を埋め込み、視力回復させるという治療方法が将来的に誕生するかもしれません。
CCDカメラ付きのメガネをかけ、光情報をケーブルを使ってチップに送信。視神経を通じて、脳に画像情報を送るという方法です。
人工網膜のスイッチを切ったあとでも視力回復した事例もあり、残っていた視細胞が電気刺激を受け活性化した可能性があるとのことです。
最後に
網膜色素変性症の症状や進行程度は、人によって大きな個人差があります。
典型的な症状は夜盲(鳥目)と視野狭窄ですが、最近では夜でも明るいことが多く、夜盲に気付かないこともあります。視野狭窄、つまり視野が狭くなってきて初めて「おかしい」と気付くことも少なくありません。
歩いていて人とぶつかってしまう、足元の小さな段差に気付かずに躓く、落としたものを見つけられない、車の運転で左右の車に気付きにくい・・・
といった症状が出た場合には、早めに眼科医で診察してもらってください。
※眼病・目の症状については以下についてもまとめています。
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